ああ、ロミオ

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気のせいかもしれないけど、美濃くんの歩くスピードが日に日にゆっくりになっている。 もっと美濃くんに近づきたいと思ったわたしは、バレンタインデーにチョコレートをあげることにした。ハート形の、安物のチョコ。 義理かよーと笑い飛ばして美濃くんがわたしから逃げられるように、本気が見えるチョコにはしなかった。ズルいなと自分でも思うけど、高校生の美濃くんに、水商売の経験がある年上の女がどんな風に映っているのか不安だったのだ。 それでも渡すとき、わたしはうっかり「義理じゃないからね」といってしまった。軽はずみな告白をしてしまったことを少し後悔するほどに、わたしは美濃くんのことを好きになっていた。 はじめて主役を演じた舞台のDVDを手に入れたので、それを美濃くんに観てもらおうと思った。劇団員以外に友達も知り合いもいないから、わたしがわたし以外をきちんと演じられているか知りたい。演技をしていない素のわたししか知らない美濃くんの感想を、どうしても聞きたかった。     
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