地味子ちゃんを部下に欲しいと頼んでみた!

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自分のコピーを終えて席に戻ると、竹本室長が手招きしている。 「何か?」 「今日の晩、空いているか?」 「はい」 「久しぶりに慰労してあげるから、一杯やろう」 「分かりました。ありがとうございます」 「6時過ぎに例の居酒屋で待っているから」 「分かりました」 退社時間に二人一緒に連れだって帰るのは目立つので、二人で飲むときは居酒屋で落ち合うようにしている。 竹本室長は入社したときの直属の上司で8年先輩。研究所に配属されて右も左も分からない地方大学出身の僕に一から研究の仕方を教えてくれた。 僕が初めての部下だったので、一生懸命に育ててくれたのだと思う。 それに応えようとがんばって仕事をしたので、竹本さんの研究成果も上がり、5年前に本社へ異動になって、企画開発室長になった。 元々竹本室長の研究センスは抜群で目の付けどころが違っていた。研究の進め方もエレガント。ただ、実験が雑で下手だった。 僕がそこのところをサポートしてうまくまとめて報告書を作っていた。昔から二人で飲むことが多く、いつも自腹でおごってくれる。 「お待たせしました」 「まずは一杯。プロジェクトご苦労様」 「ありがとうございます。いつも肝心なところをサポートしていただいて助かります」 「岸辺君が根回しを十分しておいてくれるので、スムースに事が運ぶ、さすがだ。本社へ来てもらってよかった。本部長が君のことを褒めていた。いつか調整が難しいことを愚痴っていたら、いつの間にか思う方向へ動かしていてくれた。不思議なやつだと」 「心あたりがあります。業界団体への役員の人選です。だれか自分の代わりがいないかなと言っておられたので、出たがりの某部長の部下で親しくしている先輩に頼んで話を進めてもらいました」 「なかなかやるね」 「もう転勤してから3年になりますので、ここに話をつければOKというキーパーソンが分かってきましたから」 調整先の部門では部長がキーパーソンとは限らない。もちろん部長のこともあるが、課長代理であったり、主任であったりする。 要するに一番詳しくて可否判断ができる人がキーパーソンになる。ここを根回ししておけば容易に回る。ただ、ここを説得しておかないと必ず会議で紛糾する。
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