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「ところで、部下の吉本君はどう?」
「やる気もあってなかなか積極的で意見も言ってくれるのですが、僕と意見が違うと説得するのが大変です」
「あまり良い人材でないことは分かっていたけど、彼しか回せなかった」
「入社して2年なのでまだ頭が堅いみたいで、自分の意見を曲げないところがあって」
「そういう時には、始めにいろいろ意見を言わせるんだよ。他の方法もないかなとか言って、自分が考えている方法が出るまでいろいろ意見を言わせる。出てきたところで、それは良い考えだとか言ってそれに決める。言った本人は自分の意見が通ったと思い、一生懸命にやるから」
「そういえば、室長も私にその手を使っていましたね」
「そうだったかな。人柄は真面目で悪くないから、育ててやってくれ。すべてを自分でやろうとしたら身体がもたない。部下に任せることもできないと上は務まらない」
とりとめのない話が続くが、ためになる話もしてくれるので、ありがたい。お互いに付き合いが長く、気が置けない間柄なので気楽に話ができて、ストレス解消になる。
「仕事の上で何か希望でもある?」
「ううーん。できればアシスタント(助手)が欲しいですが」
「アシスタント? 」
「会議の議論のメモをまとめて会議録を作ってくれたり、コピーをして資料を作ってくれるような」
「吉本君にさせればいいじゃないか」
「せっかくやる気になっているのに、コピー取りなどはさせたくありません。それに彼に頼むくらいなら自分でやった方が早いですから」
「それで」
「総務部にいつもコピーをしている女子の派遣社員がいるんですが、名前は確か横山。パソコンもできるというので、できればアシスタントにほしいのですが。その程度の子でいいんです。アシスタントが居れば新しい企画を考える時間を作れますが、このままでは現状で精一杯です」
「分かった。総務部長は同期だから、聞いてみるか?」
「希望ですので、できればですが、お願いします」
あれから2週間後の金曜日、竹本室長が手招きしている。
「例の派遣の彼女、来週から君の部下になるから、よろしく頼むよ」
「ええ、彼女を採ってくれたんですか、ありがとうございます」
「契約の期限が近づいていたので、丁度良かったとのことだ。これがマル秘資料だ。見といてくれ。プロジェクトの方もしっかり頼むよ」
「分かりました」
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