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「今日はまだ月曜日だから6時半には終わりにしよう。それまでならいいね」
「6時半なら、総務部にいたらまだ仕事をしている時間です」
「残業代が少なくなるかもしれないけど悪いね」
「心配ご無用です。それよりもちゃんと仕事をさせてもらえて嬉しいです。私専用のパソコンまで用意してもらってありがとうございます」
「でもコピーも頼むよ」
「もちろんです」
「会議録の出来は抜群だよ、僕が作るよりも正確だ。これなら安心して任せられる。メールもできる?」
「できますが」
「会議の打合せの日程調整に随分時間がかかって大変なので今度調整を頼む。要領を教えるから」
「やってみます」
地味子ちゃんは生ビールのお代わりをした。少し酔ったみたいで頬が赤くなっている。
「岸辺さんはお付き合いしている人はいないんですか?」
「残念だけどいない。本社へ転勤になってしばらくして取引のある会社の女性と付き合ったことがあるけど別れた。それからずっと彼女なし」
「総務部に女子の派遣社員が私のほかに二人いるのですが、岸辺さんのことをよく知っていて、カッコいい独身のエリートの部下になるんだ! と羨ましがられました」
「どこがかっこいい?」
「スーツもカッコいいし、ネクタイもセンスがいいし、それにそのカバンもブランドでしょう」
「特にブランドに拘っているわけじゃないけど、良いものを選んではいる。その方が飽きが来ないし、長持ちすることが分かっているから。このスーツも4年前のものだよ。それに、僕はエリートなんかじゃない、地方大学出身だし、吉本君のような有名大学を出ているわけでもない。仕事も精一杯で何とかこなしているだけ」
「女子は見る目がシビヤーなんです。出身大学じゃなくて仕事ができるかを見ているんです。将来性を見ているんです」
「はたから見ていて分かるもんなの」
「分かります。仕事ができる人は相手の気持ちや立場が分かってうまく仕事を進めています。それに他人への心遣いができます」
「そういうもんかね。僕は強引に進めたいといつも思っているけどなかなかうまくいかなくて、調整ばかりしている」
「岸辺さんは仕事の進め方が上手だと思います。会議に出て分かりました。室長も一目置いているのではないですか?」
「入社以来の長い付き合いなので信頼はされていると思っているけどね」
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