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木曜日の朝、8時に会社に着いて一休みしていると電話が鳴った。朝早くから何の電話?
「おはようございます。岸辺さんですか」
「横山さんか、どうした」
「昨晩から熱があって、今日一日休暇をお願いします」
「分かった、大丈夫か? ゆっくり休んで」
「大丈夫です。すみませんがよろしくお願いします」
声に元気がない。そういえば、昨日帰るころも元気がなかった。風邪でも引いたのか?
部下になってから2か月になるが、今まで、一日も休んだことがなかった。若いからすぐに元気になるだろう。
翌日の金曜日にも朝、電話があり、地味子ちゃんは2日会社を休んだ。
少し心配になった。万一のことがあったら大変だから、帰りに寄ってみようと思って、室長に事情を話し、5時になるとすぐに退社した。
住所は分かっているので、WEB地図で位置を確認した。溝の口駅から徒歩で15分くらい。地味子ちゃんがどんな生活をしているか知りたい好奇心もあった。
駅でお弁当を2つとフルーツを買ってアパートへ向かう。2階建ての古いプレハブのアパートが見つかった。
2階の端の201号が地味子ちゃんの部屋だ。明かりが点いている。携帯に電話を入れる。
「横山さん、岸辺だけど、心配なのでアパートの前に来ているけど、見舞いに行ってもいいかな」
「ええ・・・ご心配は無用です。大丈夫ですから」
「せっかく来たので、無事を確認したいから顔だけ見せてくれ。お弁当を買ってきたので渡したい」
「分かりました。2階の端の部屋です」
ドアをノックすると、トレーナー姿の地味子ちゃんがドアを開けてくれた。相変わらずの分厚い黒縁メガネ。
ドア越しに僕の顔を見るとめまいがしたのか、よろけた。手を伸ばして身体を支えた。
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