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「大丈夫? 入ってもいい?」
地味子ちゃんは力なく頷くので、身体を抱きかかえながら、部屋に入った。1DKの造り、部屋は古いが手入れがされてきれいに整っている。
6畳間に布団が敷いてあった。そこへ寝かせる。額に手を当てるとかなり熱が高い。
「熱は何度あるの?」
「朝、計ったら39℃ありました。夕方も同じでした」
「冷やしている?」
「アイスノンが融けてしまってそのままです」
「少し冷やした方がいい。氷はあるの? 冷蔵庫を開けるよ」
冷蔵庫を開けると中はきちんと整理されている。製氷器から氷を取り出して、氷水でタオルを冷やして、それを額に当ててやる。
「冷たくて気持ちがいいです。ありがとうございます」
「医者へ行ったの? 薬は飲んでいる?」
「行っていないです」
「こんな高熱が出ているのに行かなきゃダメだ。今日はもう無理としても、明日の朝行かないとだめだ。咳は出てないから肺炎ではないとは思うけど」
「すみません」
「いつも携帯している解熱鎮痛薬があるから、これを飲んでみて」
地味子ちゃんはしぶしぶ薬を飲んだ。しばらくすると眠ったみたい。
どうしようこのままにして帰る訳にもいかない。壁に寄りかかっていると眠って しまった。
「岸辺さん」と呼ぶ声で目が覚めた。
「すみません。眠ったみたいで、少し楽になりました」
「ごめん、僕も眠っていたみたいだ」
「熱を測ってみよう」
熱を測ると37℃まで下がっていた。時計を見るともう10時だった。
「買ってきた弁当を食べないか」
「いただきます。今日は何も食べてなくてお腹が空きました」
「お湯を沸かしてお茶を入れてあげる」
「すみません。お願いしていいですか」
お茶を入れて二人で弁当を食べる。二人共、お腹が空いていたので夢中で食べた。
手を洗ってから、持ってきたリンゴの皮を剥いてカット、キュウイを剥いてカット。
「器用ですね」
「これくらいできるさ」
「ありがとうございます。男の人に果物を剥いてもらったのは初めてです。いただきます。・・・・おいしいです」
「よかった。早く元気になってくれ」
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