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「あのーお願いがあるんですが、聞いてもらえますか?」
「いいよ。何?」
「心細いので、どうか今晩泊まってもらえませんか? お布団はもう1組ありますので」
「ううん、心配だからそうしようか。部下の面倒を見るのも仕事のうち、室長にも訪問すると断ってきたから、いいだろう」
それを聞くと、地味子ちゃんは少しよろけながらトイレに立った。部屋を改めてみると家具は少ないが、清潔感があり、さっぱりしていて落ち着く。
小さな机の上にラップトップのパソコン、また、本箱にパソコンの雑誌も並んでいた。地味子ちゃんらしい地味な部屋になっている。
戻ってくると、よろけながら押入れから布団を出してくれた。それを地味子ちゃんの横に少し離して敷いた。狭い部屋は布団で一杯になった。
「すみません。眠らせて下さい」
布団に横になるとメガネを外してすぐに眠ってしまった。どんな顔をしているのか、寝顔を覗き込んだ。
目をつむっているが、寝顔が思っていたよりも随分可愛い。
あの太い革のベルトの腕時計も外していたが、そのあたりに刃物で切ったような傷跡があるのに気が付いた。
手首を切った痕かもしれない。腕時計で隠していたんだな。知らないふりをしよう 。明かりを落として布団に横になると眠ってしまった。
習慣からか6時に目が覚めた。起きるとすぐに寝ていた布団を畳んで押入れにしまった。これでまた部屋が広くなった。
地味子ちゃんはまだ眠っている。そっと額に手を当ててみるが、まだ熱がある。やはり医者へ連れて行った方が良い。地味子ちゃんが目を覚ました。すぐにメガネをかける。
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