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「おはようございます。泊まっていただいてすみません。よく眠れてだいぶ良くなりました」
「まだ、熱があるみたいだから、9時になったら近くの医者に行こう」
「すみません。行って診てもらいます」
「もう少し横になって休んでいて、8時になったら冷蔵庫の中のもので簡単な朝食を作るから」
8時になったので、牛乳を温めて、パンをトーストして、卵をゆでて、簡単な朝食を作った。男の作る朝食は簡単極まりない。地味子ちゃんは何も言わずに食べていた。
それから9時にタクシーを呼んで、地味子ちゃんが行ったことがあるという駅前の医院へ連れていった。診断は風邪だった。
薬を貰って、コンビニによって昼食用にサンドイッチやおにぎりを買って、またタクシーで帰った。
帰るとすぐに地味子ちゃんに貰ってきた薬を飲ませて、布団に寝かせた。地味子ちゃんはしばらく眠った。
昼前には、熱もほぼ平熱まで下がっていたので、昼食を食べたら帰ることにした。
地味子ちゃんはサンドイッチを、僕はおにぎりを食べていると、玄関の鍵を開ける音がする。誰か入ってくる。
「母です」
「はじめまして、岸辺さんでしょ。美沙の母親の野上咲子です。娘がお世話になってお ります」
「はじめまして、岸辺です。横山さんが熱を出して会社を休んでいたのでお見舞いに来ています」
「美沙が話していたとおりの素敵な方ですね。ご迷惑をおかけしてすみませんでした。娘が病気で休んでいることは知っていましたが、私もどうしても離れられない用事がありましてようやく来てやることができました」
「僕は何の役にも立っていません」
「そんなことはありません。娘は随分安心したと思います」
「それではお母さまが来られたのでこれで失礼するよ。月曜日は無理して出勤することはないから、火曜日からでもいいからね。朝、連絡を入れてくれればいい」
「私のためにわざわざお見舞いにきていただいて、その上こんな汚いアパートに泊まってまでいただいて、本当にありがとうございました」
母親が訪ねて来るとは思わなかった。でも地味子ちゃんの母親らしい感じのいい人だった。これで、母親に任せて一安心。
やれやれ部下の世話も大変だけど、地味子ちゃんといるとなぜか心が休まる。帰って風呂に入ってゆっくり寝よう。疲れた!
地味子ちゃんは月曜日から出社した。元気になったみたいで良かった。
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