地味子ちゃんの風邪がうつった!

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「そんな一方的に気を使う関係がいやになってきて別れを切り出した。彼女は突然の別れ話に驚いて泣いた。彼女には僕が別れたいと言う理由が理解できなかった。彼女は悪くない、当たり前に自然に振舞っていただけだった。彼女には本当に悪いことをしたと思っている」 「岸辺さんは悪くない。元々相性が合わなかったのだと思います」 「僕が悪かったんだ。それからは女性との付き合いができなくなった」 「私は今の話を聞いて元彼とは別れてよかったと気が楽になりました」 「彼はきっと悔いていると思うよ」 「岸辺さんは優しすぎる。もう少し我が儘に、自分に正直になった方が良いと思います」 「僕には僕の生き方しかできないから」 「私だったら別れたいと絶対に言わせなかったと思う。こんな良い人に!」 「慰めてくれてありがとう」 地味子ちゃんは本当に聞き上手だ。風邪で弱気になっていたのか、こんな話をしてしまうとは。ビデオも弱みだけど、誰にも話してないことまで言ってしまった。 地味子ちゃんだから安心して話せたのかもしれない。聞いてもらったら、いままで持ち続けた鬱積がなくなって少し楽になった気がする。 気立ての良い子より、苦労した子が頼りにな る。好きな子より好きになってくれる子がいい。 9時前に地味子ちゃんは明日のお昼にまた様子を見に来ると言って帰って行った。明日にはもう少し回復しているだろう。 土曜日の朝、熱を測ったら37℃だった。ここまで下がってきたから、明日の日曜日一日あれば回復できるだろう。 お昼に地味子ちゃんがまた来てくれた。すぐに部屋の中をひととおり見て回っている。 「お弁当を作ってきました。多めに作ってきましたので、夕食もこれで済ませて下さい」 「ありがとう、弁当を買いに行かなくてもいいから、助かるよ」 「そのうち、食事をご馳走するよ」 「気にしないでください。私の看病をしていただいたお礼です。心細かったのでとっても嬉しかったです」
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