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よくチェックしたつもりだったが、急ぐとろくなことはない。落ち着いて!
席に戻ると日付を修正してから、もう一度原稿をチェックした。もう一か所、ミスタイプを発見した。
それからコピー室へ。まだ、女子社員がコピーをしていた。黒いスーツ、髪は後ろで束ねてポニーテイルにしている。地味な子だけど、一目で日付の間違いを見つけてくれた。
「どうぞ、先にしてください。私はまだ多くありますので、時間がかかります」
「じゃ悪いけど、部数も少ないので、させてもらうよ。ありがとう」
コピーはすぐにできた。トラブルがなければあっと言う間にできる。すぐに女子社員と交代する。女子社員はまたコピーを始めた。胸のIDを見ると「横山美沙」と書かれている。
「横山さん、コピー機を直してもらってありがとう。助かったよ。明日、朝一の会議で使うので今日中に作れてよかった」
名前を呼ばれて驚いたようすを見せたが、IDを見られたと分かったようで、ニコッと笑った。ど近眼か? 度の強い分厚いメガネをしている。
「どういたしまして、コピーをすることが多くて私も随分紙詰まりには悩まさせられましたから、今ではコピー機のほとんどのトラブルに対応可能です」
「たいしたもんだ、じゃあ、またトラブルがあったら頼みます」
「喜んで」
「僕は企画開発室の岸辺といいます。ところで、あまり見かけないけど、横山さんの所属は総務部?」
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