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総務部にいたころよりも会社に役に立つ仕事をしてくれているのに申し訳ない気持ちになる。
でも、してもいない残業手当を付けるわけにもいかない。なんとかしてやりたいので、思い切って室長に相談した。
「横山さんはとても役に立ってプロジェクトも順調に進んでいますが、総務部にいた時より残業時間が減って給料が少なくなっています。少しでも報いてやりたいのですが、なんとかなりませんか」
「横山さんが来てから随分能率があがっているのは承知している。この間、君が休んでいた時の会議もそつなくこなしてくれた。いくら上げてやれば良いのかな」
「残業時間で20時間くらい、金額では3万円くらいで良いかと思います。他の派遣社員とのバランスもあると思いますので」
「年間で36万円増か、分かった。室長の裁量でできるから、任せてくれ」
「できるんですか?」
「派遣社員の経費は企画開発室の予算の委託費に含まれている。研究委託費と同じだ。だから予算内であれば、室長に決裁権がある。人事には業務が増えたと言って、契約をし直せばいいから」
「ありがとうございます」
「そのうち人事を通して派遣会社から本人へ連絡があると思うから、本人と業務の増加内容 について口裏を合わせておいてくれ」
「分かりました」
席に戻ると、地味子ちゃんに業務内容が変わってきたので室長と相談して契約をし直すから給料が幾分上がるかもしれないと話した。
地味子ちゃんは給料が上がるより、室長に仕事を認めてもらえたことが嬉しいと言った。
それから2週間ほどたって、派遣会社の担当者が地味子ちゃんを訪ねてきて業務内容の打合せをしていた。終わってから嬉しそうに小さな声で僕に耳打ちをする。
「お給料上げていただきました」
こちらも小声で聞く。
「いくら上がった?」
「月額3万5千円です」
「前の残業手当と比べてどうなの?」
「こちらの方が少し多いです。ありがとうございます」
「室長にも目立たないようにお礼を言っといて」
「分かりました」
地味子ちゃんはすぐに室長にお礼を言いに行った。これにて1件落着!
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