グリーン・アイ《前編》

13/184
前へ
/184ページ
次へ
 それに、由汰はゲイであってもロリコン趣味はない。  彼らが行方不明になったのが五日前の金曜日。  学校を出てから都内のファストフード店で夕食をとり、その後、神保町にあるこの書店『(こみち)』で見かけたと言う目撃証言を最後に足取りが分からないのだと言う。  受験を控えた思春期真っ只中の少年たちだけに、家出という線も拭えないのではと由汰は思ったが、五日間も消息不明ともなるとやはり犯罪に巻き込まれた可能性もでてくるのだろうかと思いなおす。  神保町の古書街は場所によっては道も狭く古い建物も多いため防犯カメラもまばらだ。  まして『径』は古書街が広がる界隈からも駅前の神田すずらん通り商店街からも少し外れた古いオフィスビル群の細い路地に面している。 「ご存じないかもしれませんがね。ほんの僅かですが、斜め迎えのビルの防犯カメラに、この店の入口の足元辺りだけがほんの少しだけ映り込んでいるんですよ。その足取りから少年たちがここに入ったのは間違いないんですが、出て来るところが映ってなくてですね……」  と、そこで長谷川は言葉を濁した。  入って行った映像はあるのに出て行った映像がないなんてことはあり得ない。     
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

516人が本棚に入れています
本棚に追加