グリーン・アイ《前編》

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 事実、この家のどこにも彼らはいないし、由汰が彼らに何かをしたなんてこともないのだ。  なるほど。出て行く映像が無かったから、織部も長谷川も由汰が彼らに何かをしたと疑ったのか。  だとしても、そこに性的指向云々を持ち出してくるのはやはり間違っている。  再びレジカウンターーに並べられた二人の写真を交合に見やりながら、無意識に指で唇をいじった。  ふと、その様子を織部にじっと上から見られていることに気がついて、なぜだか慌てて指をカウンターに戻す。 「だとしても、五日前って言うわりには話を聞きに来るには遅くないですか」  ふと疑問に思って長谷川に問う。 「実は失踪届が出されたのが今朝だったもので、そのために初動捜査が遅れてしまいましてね……」  と言いながら、長谷川が意味深な視線を織部に投げる。  二人のやり取りがどこか気になったが、まあいいかと流した。  近頃の親というのは子供にさほど関心がないのだろうか、五日間もたってから失踪届を出すなど常識から外れているようにも思えるのだが。と、考えてからふと自分の母親のことを思い出して、いやそうでもないかと頭の中で苦笑った。  そういう親はきっと世の中にごまんといるのだ。     
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