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そう言って平静を装ってはみたが、聞き込みなんてドラマの中だけの話だとばかり思っていたから、突然のことにちょっとばかし緊張がはしる。
「どうです? 見覚えありませんかね?」
由汰はレジカウンターの上に並べられた二枚の写真を交合に見やりながら無意識に唇を指でいじった。
「五日前にこちらの店に来ているはずなんですがね」
「ええ」
確かに、見覚えがある。客の顔をちくいち把握している訳ではないが、この少年たちについては覚えがあった。
「あるにはあるんですが……」
目を眇めながら口許に指をあてたまま黙り込む。
なにかが、違う……。
写真に違和感のようなものを覚えて、それを探りだせないまま由汰は片方の少年を指さしながら答えた。
「こっちの少年は覚えていますよ。僕に対して声を掛けてき……」
「なんてだ」
「え」
「なんて声を掛けてきた」
被せるように質問を投げかけてきた上背のデカい織部尚政に反射的に顔を上げて眉を寄せた。
「お兄さんもハーフなんですねって」
由汰が指さした少年は見るからに外国人とのハーフだ。
「それで?」
どこか険を感じさせる織部の声にいささか気分を害しながらも、
「それで……」
と、そこでなんとなく言い淀んでしまった。
「どうした」
「あいや、こっちの子も一緒だったはずなんですけど」
「だけどなんだ?」
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