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急き立てるような織部の言い方についムッとしながらも、
「分かりません……。でも、なにか……写真と違う」
写真を覗き込みながら、小首をかしげて無意識にまた唇をいじる。物を考える時の癖なのだ。
もう一方の男の子は黒髪に黒目をした一目見て日本人だと分かる容貌だった。
確かにこの少年も店に来ていたはずなんだが、けれど何か違和感を覚えて由汰は口ごもった。
まじまじと正面から顔をつき合わせたわけではないのだ。まして、まともに会話をしたわけでもない。
それでも何か、何かを感じたと思ったのだが……。
「おいっ」
「えっ」
「見たのか見てないのかはっきりしろ」
「――は?」
人が閉店時間後にも関わらず、こうして必死に思い出そうと努力していると言うのに、その言い方はないだろう、と露骨に歪めた顔で織部を仰いだ。
「僕が言いたいのはね、この写真と少し印象が違った気がするってだけで見てないなんて一言も言ってないでしょう」
「どう違って見えたんだ?」
その傲慢な態度を遠回しに指摘したつもりだったが、残念ながら通じなかったらしい。
由汰は織部からふいっと視線を外すとレジの締め作業に戻りながら頭を振った。
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