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「まさか、僕を疑ってる?」
「違うのか?」
唖然として思わず瞠目する。
まさか、よもやこんなことが? 赤飯でも炊いて祝うべきか、うっかり真剣に悩むところだ。
自分が生きている間に容疑者扱いされる日が来るなんて。
それも一日の一番疲労している時間帯の、最高に体調が絶不調の時に。
冗談なら笑えるが、目の前の織部の表情はそれが冗談ではないと雄弁に語っている。
「悪いことは言わない。もしも、こいつらをこの家のどこかに囲ってるって言うなら、今この場で包み隠さず、とっとと吐いたほうがいい」
「吐いたほうがいいって……」
まさか本当に冗談だろ、と思わず首を傾げながら片頬で嘲ってしまった。
本気でそんなこと言っているのか。そもそも『囲う』などと言う表現が正しいのかもはなはだ疑問だ。
少しでも協力しようと思っていた自分が急に馬鹿々々しくなる。
客からの注文リストが入ったファイルをカウンターに取り出して、ペラペラとめくりだす。
敬語で対応する気も一気に削がれた。
「悪いけど、他を当たってくれ」
「言われなくとも。だが、今はお前に訊いている」
「お前って……刑事さん、あなたね」
さすがに咎めようとして身を乗り出すと、手の平一つで遮られた。
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