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「ご託はいいからさっさと答えろ」
「なに……」
「悠長にお前と話し込んでいられるほど、こっちは暇じゃないんだ」
「こっちだって……」
「よく聞け。訊かれていることが理解できていないならもう一度だけ言ってやる」
「だから」
「囲っているのか、囲っていないのかどっちなんだ」
「囲ってないよっ」
夜二十時過ぎとあって少し疲れていた。いや、今日はだいぶ疲れていた。朝から血糖値も安定せず身体も重い。悟られまいとして最後の力を振り絞って平静を装ってはいるが、実のところこうして立ちっぱなしで作業しているのもそろそろ限界なのだ。
今日はパートの平多昌子が用事があるからと急遽一時間ほどで帰ってしまった上に、世間では学校が夏休みに入ったこともあってビジネスマンに混じって学生客もひっきりなしだった。
その対応だけでもバタバタしていたというのに月末とあって出版社への請求書の支払いやなにやらで今日は一日忙しなく、ろくにお昼ご飯も食べられていない。
二十時の閉店時間をようやく迎えて、これから在庫の確認や客から受けた本の注文の手続きなどがまだまだ残っているところへ、この刑事たちの予期せぬ来訪。
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