グリーン・アイ《前編》

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 あげく意味も解らず頭ごなしに容疑者扱いされては、少しばかり気が立ってしまっても仕方がないだろう。 「顔色が悪いな。どうした? ここにきて、まさか逃げようなんて往生際の悪いこと考えるなよ?」 「だから……」  勘弁してくれ。  顔色が悪いのは血糖値が芳しくないからで、後ろ暗いことなど何もないのに逃げるわけがない。  何を言っても悪い方にしか取ってもらえないのではと思ったら否定して言い募るのも億劫になった。  レジカウンターに両手をついてだるい体を支えると、正面の織部をじっと見やる。  三白眼。  黒目(虹彩)が小さく、白目の部分が多く見える目の形のことを言うが、織部の場合は黒目の下に白目が広がっている。  こういった目は苦手を通りこして正直嫌いだ。  時折この目をした人間を見かけることがあるが、その目を見ると、昔から背筋に恐怖にも近い嫌悪を感じる。子供のころのトラウマが原因なのは分かっているのだが。  だが、なぜだろう。  忌々しいことに、なぜだかこの男の目には雄々しいものを感じてしまう。  それどころか、じっと息を潜めて遠くから獲物を狙うような、野性的な双眸はともすれば色気さえ感じて、その目の奥の強い光から目を逸らせなくなりそうだ。     
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