グリーン・アイ《前編》

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 この状況下で、こんな男に一ミリでも魅力を感じてしまった自分に無性に腹がたった。  ノーネクタイのボタンを一つ外した半袖の開襟シャツから覗く首や腕は浅黒く日焼けして、厚く筋肉の張った肩や胸は日ごろからよく鍛え抜かれているのが服の上からでも見て取れる。  外来種の血が混じっている一七七センチの由汰よりも、ゆうに頭一個分は高い。  場数を踏んできた刑事の隙の無さと、男の放つ威圧感はカウンター越しでもこうして正面に立たれると、大きな壁を目の当たりにしているようだった。  大げさな例えかもしれないが、体感的にはきっと言い過ぎではないだろう。  強く張った男らしい頬骨にくっきり隆起した鼻梁と大きくて引き締まった厚い唇が、この男の傲慢な征服欲を如実に表しているようだ。  年齢は三十代半ばあたりか後半か。 「そもそもどうして僕なんだ」  なんの根拠があってその少年たちを由汰が囲っていると言っているのか。 「お前だって近頃よく耳にするだろう。その辺のイカれた男が未成年の男子に猥褻な行為をするなんていう話を。最近じゃ珍しい話でもなんでもない」  確かに、つい最近も男性教師が教え子の男子生徒を無理やり自室に連れ込んだなどといったニュースを聴いた気がするが。  だからと言って、     
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