グリーン・アイ《前編》

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「それとこれと、どういう繋がりがある」 「お前の性的指向が、男相手だということは分かっている」  なるほど、 「……それで?」  顔にゲイだと書いたつもりはなかったが、警察と言うのはどこからでも情報を集めてくるものだ。  隠している訳ではないものの、自分がゲイだと積極的に触れ回っているわけでもない。  今はもう他界していないが、この家の前の主の南三千雄と翻訳家であり輸入雑貨店を近所で営む兼子孝也(かねこたかや)と母親の再婚相手であるフランス人のジャンは由汰がゲイであることを知っているが、それ以外の人には仮に気づかれていたとしても自分の口から言ってはいないし、母親代わりのような昌子だって知らないのだ。  以前に、時々通っていたその手のBarは置いておいたとしても。  とは言え、警察の見解がその理由からだと言うなら、あまりにも安直過ぎてなんだかがっかりな気分にさせられる。  それに、同性愛者を小馬鹿にしたような、蔑むような含みを、織部が一瞬口許に浮かべたのも気に入らない。  日本でも同性婚がある一定の地区で認められた今となっても、やはり同性愛者に偏見を持つ人はまだまだ多い。     
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