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樹々が鬱蒼と立ち並ぶ坂を200メートルほど上り、ようやく辿り着いた朱色の大きな鳥居の先には、気が遠くなるほど高い階段が更にデーンと待ち構えていた。
マジか……
首にかけた短く見えるタオルで、顔の汗を拭い取る。『健康優良児』の文字が横に伸びたTシャツの背中は汗でべったりと張り付き、1ミリも動く気配がない。
息を切らしながら一段一段踏み鳴らしていると全身から汗が滝のように流れ、心臓がバクバクとヤバイぐらいに踊り出し、肺が捻れるように痛い。
ハァ、死ぬ……85キロの巨体が持ち上がらん。デブの体力舐めんな。
私の脇をするりと追い越し、キャッキャッと喋りながら軽い足取りで登っていく女子たちを恨めしい目つきで見送る。
オイコラ。デブの基準、間違ってんぞ。必要ないだろーが!
階段の上で猫背になって大きく肩を揺らし、荒い息を吐いた。
けど、参道を歩くとまた階段……ほんとにこの神社、殺意を覚える。
ゼイゼイ言いながら上りきると、ようやく拝殿に辿り着いた。長かった……
拝殿の正面の門柱には、金色の文字で『細井神社』と刻まれている。
ここは、ダイエットの神様を祀っている神社なのだ。
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