透明になりたいのか

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「‥‥ごめん、ハアハアうるさいよね。あの、足をちょっとね」 「足‥‥痛いの?」 「ちょっと、ね」 「大丈夫?」 「‥‥うん」 アンノは、薄く微笑んだ。 「あの‥‥このタイミングで言うのもどうかと思うけど‥‥」 「‥‥なに?」 「‥‥結構、見てくれてるでしょ、わたしのこと」 「‥‥えっ?」 どう返したらいいのか、と思った。どう返したらベストなのか‥‥ 「まだまだね」 「えっ?」 「修行が足りないのね」 「‥‥修行って?」 「わたしって見た通りなの。だから、自分をもっと強くしたいというか、向上させたいというか、スペシャリストになりたいというか‥‥だから」 「だから?」 「だから、忍者になろうって決めたの」 「‥‥忍者?」 「通信教育で修行中なのよ。ゆくゆくは海外で、カタカナのニンジャになるの」 「‥‥そうなの?」 「だから、これからは完全に自分の気配を消せるようにがんばるわ」 チャイムが鳴った。 「手、貸そうか?」 「‥‥あっ、大丈夫。ありがとう」 じゃあと言って、アンノは階段を下りて行った。 僕は‥‥教室に向かった。足に痛みは全く感じなかった。 おわり
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