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透明になりたいのか
こんな感じで、アンノとは普通に廊下ですれ違う。
挨拶する訳でもなく、もちろん、微笑み合う訳でもない感じで。
「いいにおい、するよね。彼女」
「あっ、ああ、そう‥‥かな?」
「高いトリートメント使ってるよ、きっと」
「‥‥わからないけど」
「わたしは?」
「お前?」
「太陽のにおい、潮風のにおいがするでしょ?」
「昨日、行ったのか?」
「うん。波のコンディションが結構よかったから、張り切ったら疲れちゃったよ」
ねねは、日焼けした人差し指を、近くにいた女子と話を始めたアンノに向けた。
「彼女、白いよね。なんかぎゅって抱きしめたらすぐ折れちゃいそうだし、スポーツとか遠そうな静かな感じで、わたしと全く逆よね」
「そうだな」
「即答ね」
「彼氏がきたぞ」
高木は、ハァとため息をつきながら近づいてきて、僕の肩に手を乗せた。
「なに? どうした?」
「職員室というビックウェーブに飲まれてしまった」
「どういうこと?」
「脅かされた。今度の期末で一つでも赤点とったら、間違いなくダブるぞってさ」
「マジか」
「まったく‥‥勉強しないから」
「俺は勉強より海を愛しているんだよ」
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