プロローグ ◆むかしむかし◆

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「またね、アイナ」  白い布の向こう側からキエロの声が聞こえた。 「うん。またね。お姉ちゃん」  マルヤラに手を引かれて、アイナは食堂へ入っていった。 「ごめんね、いつもごちそうになっちゃって」  食事の準備をしているアイナの母親に、マルヤラが声をかけた。 「いいのよ、これくらい。アイナ、ちゃんと手を洗った?」 「うん」  子供用の椅子に座ると、アイナは向かいに座ったマルヤラに尋ねた。 「ねえ、マルヤラ。『開く者』って誰のこと?」 「アイナも見たことがあるでしょう。『楔の竜』の絵」 「うん」 「あの『楔の竜』のお話に出てくる人よ。竜と言葉を交わせる人。この世界の理を変えてしまえる人。『開く者』が『楔の竜』の力を使って、この世界を救うといわれているの」 「その人はどこにいるの?」 「この世界にはいない」 「いないの」 「この世界にはね。『開く者』は別の世界からやってくるといわれている」 「いつ? いつ来てくれる?」  マルヤラは笑って首を振った。 「私にはわからないわ。ううん、誰にもわからない。ただ……」  アイナがマルヤラの顔を見上げると、彼女は窓の外から遠くを見つめていた。 「あの丘の上の木。竜の木」 「うん」 「あの木に、花が咲いたら」     
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