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ビクッと少女の肩が震えたかと思った瞬間、せっかく減ってきていた涙はものすごい勢いで溜まり始め、あっという間に元の状態に戻ってしまった。
思わず手を離していた少年は目を見開いたものの、すぐにまた両手を当てて、撫で始める。
やはり慎重に、優しく。
慌てず、焦らず、ゆっくりと。
その後、涙は減ったり増えたりを繰り返し、少年はそれでも変わらず、ずっと撫で続けた。
◆
どれくらいそうしていたのだろう。
少女の翼が現れ、また元に戻ってしまうのかと思われた時だった。
今まで微動だにしなかった少女の顔が、ゆっくりと上がり、ようやく撫で続ける少年の存在に気付いた。
全身に力が入り、足を抱えている手がその強さのあまり真っ白になる。
怯えるような瞳からは、また一粒涙が落ちた。
他者が恐ろしいと思っているはずの少女であるにも関わらず、何故か少年から目を逸らすことができない。
銀の色彩を持つ美しい少年は、少女と目を合わせたまま、またゆっくりと殻を撫で始めたのだ。
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