47人が本棚に入れています
本棚に追加
何も無い、白い世界。
遠く広がり、行き着く場所もわからない。
前後左右、上下さえもわからなくなり、手を伸ばして、ようやく前がわかる。
果てがあるのかすらわからない。
暑さも寒さも感じず、いかなる匂いもしない。
微かな音も聞こえず、白すぎる世界に目が見えているのかもわからなくなる。
五感すべてが全く意味をなさない世界。
そんな中を一人の少女が、ゆっくり歩いている。
ふらふら、ゆらゆら。
時折、倒れそうになりながら、少しずつ前に進んでいた。
純白のワンピースからは、細くて長い足が出ており、必死になって自らの体を支え、長い両腕は己を守るように体を抱き締めている。
少女に何があったのか。
その背中から生える大きな白い翼は、中程でポッキリと折れ、痛々しい姿となっていた。
愛らしかった笑顔は消え、痛みを堪えているのか、翼を折られたことで絶望しているのか、または、どちらでもあるのか、苦痛に満ちた表情をしている。
最初のコメントを投稿しよう!