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何も無い、白い世界。 遠く広がり、行き着く場所もわからない。 前後左右、上下さえもわからなくなり、手を伸ばして、ようやく前がわかる。 果てがあるのかすらわからない。 暑さも寒さも感じず、いかなる匂いもしない。 微かな音も聞こえず、白すぎる世界に目が見えているのかもわからなくなる。 五感すべてが全く意味をなさない世界。 そんな中を一人の少女が、ゆっくり歩いている。 ふらふら、ゆらゆら。 時折、倒れそうになりながら、少しずつ前に進んでいた。 純白のワンピースからは、細くて長い足が出ており、必死になって自らの体を支え、長い両腕は己を守るように体を抱き締めている。 少女に何があったのか。 その背中から生える大きな白い翼は、中程でポッキリと折れ、痛々しい姿となっていた。 愛らしかった笑顔は消え、痛みを堪えているのか、翼を折られたことで絶望しているのか、または、どちらでもあるのか、苦痛に満ちた表情をしている。
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