歌姫

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歌姫

 僕、如月(きさらぎ)キョウ、十六才。あの世界では、高校一年生だった。この世界での性別は謎。冗談じゃなくて、正直、自分にも分かっていない。男の子の記憶を持っているけど、外見は女の子。生物学的には……、人間ですらないかも知れない。  解けば腰下まで届く長い髪は明るい栗色のストレートヘア。それを編み上げることもあれば、ポニーティルにしていることもある。背丈は女の子としては高いほうで、華奢ってほどじゃないけど細身。瞳は鮮やかな緑色。鏡に映るその顔は、自分で言うのも変だけど、身に覚えの無い異世界的美少女。だから、これが僕の記憶の中にある世界ではないことだけは確か。  アンティークな飾り窓から外を見ると、西洋風でファンタジーな景色が広がっている。起伏の多い街並みに尖塔が目立ち、石造りの城壁もある賑やかな町だ。空を飛んでいるのはカラスではなく竜の様な生き物の姿だ。  ある日、僕は、揺り起こされた。この不思議な世界で。  * * * * * ♪  「キョウ、起きて。朝だよ」     
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