電車に乗る前

2/3
前へ
/56ページ
次へ
彼女が乗り込む帰りの電車を待つ間、彼女は、ふてくされていた。 僕と彼女は、遠距離恋愛。 帰る電車も反対方向。 少しでも彼女と一緒に入れるように、僕は、いつも彼女が電車に乗り込むのを見届ける。 しかし、彼女は、さっきのイタズラをまだ引きずって怒っているようだ。 彼女が乗る予定の電車がホームの先より、まだ先の一直線に伸びる線路からずっと遠くに見えてきた。 駅のホームでも案内アナウンスが聞こえてくる。 電車が目の前に停まり扉が開くと、いっせいに降りてくる人々。 降りる人達を待つ間も彼女は、可愛らしくほっぺたを膨らましている。 降りる人の列が途切れると、次は、どんどん人が乗っていく。 彼女が乗り込む寸前にどうしても言いたいことのある僕は、彼女を後ろから抱きすくめる。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加