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「すみませーん。入部希望なんですけど」
部室は一階の隅にある空き教室というのは調べていた。
そして扉の向こうには…彼女がいた。窓際に座って外を眺めている。
この先輩がいるから演劇部なんて興味がなかった部に入部を決めたんだよな。
「新入部員大歓迎、入って!あ、入部届け受け取るね」
「はい。一年五組の井坂巧です、演劇とかぶっちゃけ素人ですけどよろしくお願いします」
「私が部長の金井里香です。それでうちの看板女優は、あそこでぼんやりしてる子。
みーちゃん、自己紹介して」
みーちゃん、と呼ばれて彼女と目線が合う。リップをつけているのかと思うほど赤い唇に目が反応する。
そして5秒ほど目が合った状態が続くと先輩が口を開いた。
「井坂君。貴方は大きな勘違いをしているわね」
「へ…?」
な、なんだ?なにをどう勘違いしてんだろ…。そんな様子をクスクスと部長が笑ってみている。
「水無月千沙ちゃんは天然系不思議ちゃん?でも役に入るとすごいから」
俺がこの水無月先輩を見たのは去年の文化祭。
演目はバカな俺でも知ってたロミオとジュリエット。
もちろんジュリエット役はこの水無月先輩。
当時1年だったのに恋愛に生きるジュリエットを見事演じて俺の心までさらっていった。
簡単に言えば一目惚れしただけ。高校生活恋愛せずになにしろっていうんだ。
「誰でも最初は素人。そこからどんな色がつくかは、貴方次第。
ほら、そこに飾っている蕾の薔薇たちを見てごらんなさい。分かる?」
「…すんません、あんまり理解できないッス」
「あはは、その薔薇はみーちゃんの趣味で置いてあるの。
大体赤が多いかな?ね、みーちゃん」
「はい。赤い薔薇はどんな人も引き付ける色ですから」
天然系不思議ちゃん、俺ってとんでもない人に一目惚れしたか?
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