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ヘッドホンから流れる懐かしい友の声を聴きながらラップトップのプレイビューを見つめる。
曲に合わせて常に形を変え続ける極彩色の波形を見ていると余計なことは何も考えずに済むような気がした。
曲の入れ替えで波形が消えて画面が真っ暗になると感情の薄れた無表情な自分の顔が映り込み、ユウコはラップトップを閉じた。
二年前のあの日からユウコはMor:c;waraの曲を聴くと途方もない寂しさを感じるようになってしまった。
それでもたまにこうして彼らの音楽を聴きたくなるのは、未だにタスクの死を受け入れられないでいるからなのだろうと認めている。
タスクに預けたギターはもう二度と戻ってこないだろう。
今はただ、随分前に剥がれてしまったまま修復しなかったピックガードが手元に残っているだけだった。
何度も手に取って眺めているうちに擦り切れて表面の塗装が剥がれてしまっている。
白く残った文字の痕跡がなんとか読み取れるくらいだが、今となってはこんな残骸が唯一の形見だった。
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