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有名ミュージシャンの子供が親と同じ音楽の道を辿るのは珍しい事ではない。
それだけではさほど話題にもならないだろうが、内野あかりの娘となれば世間ではちょっとした騒ぎになるのも頷ける。
しかし海老名の怒りの要因はもっと致命的な現実をセイイチに思い知らせた。
「KANONのCMは……」
「その子が出演することが決まったそうだ」
悪態とも狼狽ともつかない呻き声がセイイチから漏れる。
KANONで決まったものだと思ってタイアップ曲の構想も進めてきたというのに、この知らせはショックが大きかった。
「CMの内容は俺も大体聞いている。
内野あかりの娘が出てきたとなれば、ステラ電子も考えを改めざるを得ないのは必然だ。
実の娘なら宣伝効果も大きいからな」
海老名は一定の理解を示すような台詞を口にしながらも、その表情は煮え湯を飲まされたように歪んでいた。
よりによってKの紹介を蹴ったばかりで、その相手に仕事を奪われるなんて情けない。
そこでセイイチは果たしてKはこの事実を知っていたのだろうか?と疑問を感じた。
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