track6:Paint it, Black

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 バンドの解散を機に会社を守る決断を下した海老名は、クリエイターとしての夢をセイイチに託して自らは裏方に回った。  それでも音楽に対する情熱を忘れることなど出来る筈もなく、思うような成果を出せないセイイチに対して歯痒く思っているだろうことはセイイチ自身も感じている。  このタイミングでその不満が噴出してきたらしいが今回のことと結び付けて捉えられると、状況としてはあまりにアンフェアだった。  セイイチも海老名のやり口に反発を感じて睨み返す。  一触即発の空気が張り詰める中、無言で睨み合う二人。  ブラインドが降りているためこちらの様子は外からは見えないが、部屋に近い席にいる社員達がブラインドの隙間から室内の様子を窺っているのが解る。  こんなとき、いつもならKが二人の間に立って仲裁するのだが、今は止めに入るものが誰もいない。  事情を知らない社員達は誰が行動を起こすのか牽制しあっているようだった。     
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