Introduction

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 ステージを照らす照明が弱まり、足元のフットライトが淡い光を放ち始める。  朧げな暗闇の中で慎重に手元を確認してから一呼吸すると、できる限り優しく、それでいて弱々しくならないように気を付けながらアコースティックギターの弦を弾いた。  柔らかい音色が紡ぐ緩やかなメロディーが密閉された薄暗い空間に優しく広がり、旋律に合わせて口ずさむハミングがマイクを通してフロア全体に浸透していくと、音楽以外何も聞こえない静かなフロアにはまったりとした時間が流れ始める。  暗い夜道を照らす月明かりのようなスポットライトがリズムに合わせて徐々に明るさを増し、ステージ上のたった一人だけを明るく照らし出した。
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