Track8:HERO

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 灰色の雲の影に投影した月の明かりが、くすんだ暗い夜空をボンヤリと照らす。  広い川幅を持つ河川に隣接する遊歩道から見える川面に映る街の明かりが、緩やかな川の流れに揺れてチラチラ輝く。  水辺の空気は一際冷たく、白く曇る吐息が冬の訪れを感じさせた。  警察から身柄を解放されたユウコは、一時的に没収されていたギターを回収すると、店に戻る道すがらセイイチとケンジの二人に古い友人の話を始めた。 「高校生の頃、音楽好きの趣味が高じてタスク君と親しくなったんです。  一緒に曲を書いたり、歌ったり。  ギターの弾き方を教えてくれたのも彼でした」 「あいつがギターを?」  セイイチは信じられないといった表情で興味深そうに頷きながらも、記憶の中のタスクの姿を思い出したのか嬉しそうに笑った。
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