track1: SLOW DOWN

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 だから今夜のように若い女性シンガーがステージに立つことはこの店では珍しい。  若く張りのある声がティーンエイジャーの甘酸っぱい恋心を可愛らしく歌っているが、中年男性が多いこのbarの客層にはあまり似合わない選曲であることは間違いない。  それでも客観達は何時もと違うこの雰囲気を素直に楽しんでいるようで、サポートバンドの面々も、いつもジャズクラブで演奏を披露している凄腕のベテランアーティスト達ばかりなのに、普段あまり演奏しないタイプの曲のせいか、一段と張り切っているようにさえセイイチには見てとれた。  髪に白いものが混じり始めている初老の男性達と彼女とでは祖父と孫ほども年が離れているので、その対比がなんだか妙に微笑ましい。     
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