track10: アコースティックブルー

6/17
前へ
/344ページ
次へ
 客の注目を集めることには成功したが、土井の間の抜けたアナウンスを聞いてセイイチが「あいつ......っ!」と呆れて呟く。 「本番前に散々打ち合わせしたのに、なんとかなんねぇのかあの喋り方?」  次に何を言うのか忘れてしまったのか土井が目を泳がせて突っ立ているので、セイイチがカウンター席から腹立たし気に大きな身振りで指示を出すと、ハッとしたように目を見開いてそのままステージ脇に目を向けた。  ギクシャクと片手を差し出して演者を招き入れる。 「美しい声を持つシンガーのユウコです!」     
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加