track10: アコースティックブルー

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 ユウコの圧倒的な才能に驚き、無意識にカウンター席から立ち上がってステージの演奏に聞き入っている。  そして同時にセイイチがついに彼女を見つけたのだと気づいて嬉しくなり、「本当にやりやがった」と思わず言葉が漏れた。  海老名は目の前で繰り広げられているパフォーマンスに魅了され、かつてその場所に自分がいた時の情熱が沸々と胸の奥に沸き起こるのを感じながら、Mor:c;waraのギタリストだった頃の本当の自分を思い出していた。  バンドの解散は望んだものではなかった。  やり残したこともたくさんある。  それでも会社を守るという選択をしたのは、セイイチを信じたからたっだ。  その選択はどうやら間違っていなかった。  ステージの上で心から楽しそうに演奏しているセイイチの姿を見て、悔しさに似た感情が沸き起こると、ずっと封じ込めてきた衝動が自分の内側で爆発するのを海老名は確かに感じた。     
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