track10: アコースティックブルー

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 ユウコは必死に声を張り上げながら、どこかで聞いているかもしれないもう一人の観客にも届くように精一杯の演奏を続ける。  あの日以来、歌うことを辞めてしまったこの二年間を悔いるように、歌うことの喜びに心から感動し、再び希望を与えてくれたセイイチに感謝した。  そしてもう二度と会えないと思っていた古い友人が今も自分の胸の中に生き続けていたのだと気づいて、もう二度と振り返ることは無いと信じることが出来た。  運命に導いてくれたタスクとこの曲の存在を何よりも愛おしく感じながら、ユウコは彼にも届け!と心の中で叫ぶ。
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