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Kが立ち去り際に残したセリフに苛立ちながらセイイチは溶けた氷で薄まってしまったウイスキーの残りを一息に飲み干した。
「天才プロデューサーのお眼鏡にかなう才能は未だ現れずか」
やけに嬉しそうにニヤつくケンジがカウンター越しにセイイチを見下ろしていた。
「プロデュース業は上手くいってるかねセイイチ君?」
「嫌味な野郎だな。今の聞いてたくせに」
「これでも期待してんだよ。
セイイチ君が認めた人はいつもスゴいからさ」
「よくいうぜ」
セイイチは照れ臭そうに唇の端を歪めると表情を隠すようにケンジから視線を反らした。
自然とステージへ目が向き、演奏を終えたバンドの周りにほろ酔いの客が数名集まっているのが視界に入る。
撤収作業をしながら和やかに応対するサエの後ろで、Kが慣れた手つきでシールドを捌いていた。
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