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何時のことだったのかは定かではないが、臨海公園のベンチに腰かけて水平線の彼方に沈む夕日を二人で見つめながら、一つのヘッドホンを片耳ずつ挿して一緒に色々な音楽を聞いた日のことをユウコは思い出した。
工事中の埋め立て地から若木のように伸びるクレーンの陰がボンヤリと水上に浮かび上がり、その影が日暮れと共に完全に見えなくなるまで、藍色の空に星が瞬き始めるまで、ずっとそこで二人は一緒に同じ時間と音楽を共有しながら寄り添っていた。
ひび割れたデジタルプレイヤーのディスプレイを覗き込みながら、懐かしい記憶の中で隣に寄り添うタスクの体温をユウコは思い出す。
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