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サエのステージが終わり、それまで静かに演奏を聞いていた客達が談笑をはじめ、料理やドリンクの注文が再開したことで店内が俄かに騒がしくなってきていた。
「店は上手くいってるみたいだな。始めた頃はガラガラだったのに」
「最近は何とかね」
「音楽辞めてbar始めるなんて言い出したときは、どうかしたのかと思ったけどな」
「自分の店を持つのは夢だったし、
それに俺はセイイチ君やタスクみたいな天才とは違うからさ。
君達の後にくっついていったら運良くオイシイ思いが出来たってだけだよ」
「この店が持てたのは俺のお陰ってことだな。
少しはサービスしろよ」
「そういうのは溜まったツケを払ってから言ってくれるかい」
ケンジがそう言ってセイイチの前にチェイサーのグラスを差し出す。
店が忙しくなってくるとセイイチの相手をしていられなくなるため、ケンジが水を出すときはいつも帰れという合図になっていた。
「ケンジ君、注文いいかい?」とカウンターについている客の一人が声をかけたのを皮切りに、セイイチの周りがオーダーを待つ客で賑わい始める。
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