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店を出ようとカウンターに広げた私物を整理し始めたセイイチが骨董品のデジタルプレイヤーに手を伸ばしたところで「何か飲まれますか?」と女性スタッフの声が聞こえた。
伸びのある穏やかな高い声で、少しだけ鼻にかかった感じが愛らしい綺麗な声だった。
声に釣られてセイイチが顔を上げるとそこには、思わず目を見張る美人が微笑んでいた。
肌の色がとても白く艶やかで、後ろにまとめた黒髪と人形のように均整のとれた目鼻立ちが大人の女性らしい美しさを備えている。
その一方で健康的な赤みの差す頬や柔らかな輪郭にはどこか幼なさも垣間見えて、黒目の割合が大きい奥二重の瞳にも小動物のような愛らしさを抱かせる。
そんな少し潤んだように輝く円らな瞳が、覗き込むと吸い込まれてしまいそうな怪しい奥深さも同時に湛えているのが印象的だった。
カウンター周辺の小さなランプや店内の暖色系の照明が、無数に並べられたグラスやボトルを通してキラキラ輝き、後光のように彼女の姿を浮かび上がらせていたため、セイイチの頭の中には思わず”天使”という単語が思い浮かんだ。
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