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ロココ調の椅子やテーブル。
細かなダマスク柄が描かれたベージュの壁紙には年代を感じさせる日焼け跡がある。
テラス席に通じる大きなウィンドウには両脇に臙脂色のカーテンが吊り下げられていて、これは古い映画館のスクリーンをイメージしているそうだ。
少し離れた位置から外を眺めると、行き交う人の姿や、通りに面する洒落た建物が窓枠の内側に小さな世界をつくって見えた。
なるほど映画のワンシーンを見ているような気になる。
カフェにしては少し上品すぎる雰囲気にセイイチはどこか落ち着かない気分だった。
午前中雨が降っていたせいで空は薄暗く、初冬の肌寒さが身に堪える寂しい昼下がり。
気を遣った取材者側が店の半分を貸し切りにしており、店内にはランチついでにお茶をしているママグループが2組いるだけだった。
上品そうな出で立ちで取材が始まっても特にこちらを気に留めるような素振りも見せないので、気負う必要は無さそうだと感じて、セイイチは肩の力を抜いた。
穏やかな空気の流れる静かな店内にはカメラマンのシャッターを切る音が軽快に響く。
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