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―――北西ブーストン州エリア6地下自治区。
北西最大の地下自治区であり、武装蜂起勢力の本部があるところでもある。収用限界規模は約5万人。
戦闘員数は、その内の約4万人にも上る巨大勢力である。
しかし、ほぼ全員が実際の戦闘に関しては未経験者。政府の軍人には到底及ばない戦闘スキルであり、死のクリスマスから10年間、そっと息を潜めて隠れて生きてきた。
だが、それももう、終わりの時を迎えようとしていた。
「どうした、シオン。そんな暗い顔して」
エリア6の共同ダイニングルームにある端っこの席に、一人で腰掛けているボサボサ黒髪の少年に向けて男は話しかける。
男の名は、アベル・ハレス。元アルファ4の出身であり、シオンと呼ばれたボサボサ黒髪の少年とは幼なじみの18歳の少年である。赤髪が特徴的で、どこか飄々とした雰囲気を醸し出している。だが、細身の見た目の割にはしっかりとした筋肉があり、贅肉の影は見られない。
「なんだ、アベルか。何か用?」
アベルに声をかけられた少年シオンは、アベルを見た途端、どこかむすっとした表情を浮かべる。瞳の中は涼しくも、悲しみに取り付かれたような空っぽさが併存していた。年齢は17歳。年齢以上に彼は周囲から大人びて見えた。優しさを持ちながらも、普段は愛想の無さと無気力さを感じる、不思議な雰囲気の少年である。
「相変わらずだな、お前。用が無くたって話しかけても良いじゃんかよ。いやさ、お前が暗そうな顔してたからよ、話しかけたんだよ」
「ああ、そうか。やっぱり、顔に出るってことか」
シオンは、テーブルに置かれたコーヒーカップに目を追いやり、波打つコーヒーに写る自分の顔を見て、そう呟く。
そんなシオンを見て、アベルは髪の毛に人差し指を突っ込んで頭をカリカリと1~2秒ほど掻く。すると、シオンの目の前の席に座り、真剣な表情をすると、一言、口を開く。
「怖いのか?」
「…………別に、そういう訳じゃない。いつかは始まることだって分かってた。いつかは、こうなる運命だって知ってたさ。けど、その時が自分が思っている以上に早かった。それだけだよ」
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