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第2章 笑顔
ドネスの盾に隠れるライラとドバゴ。そこに、また銃口を向けるイネス。ど真ん中を狙い、引き金を引く。金属の跳ね返る鈍い音とともに、銃弾が、地面に転がる。
「あちゃー、貫通しないわ。やっぱり、訓練弾じゃ威力が弱いわね」
イネスが残念そうに、スコープ越しに確認する。
「なぁ、おい、シオン。俺らもやろうぜ!」
セシリアのボディーブローから回復したカイが、待ちきれないとばかりに、カードを取り出そうとする。
「ダメだ。イネス、次、煙幕弾を頼む」
「了解」
シオンに言われ、銃弾を変える。もう一度、スコープを覗くと、盾の右前方に煙幕弾を撃つ。
銃弾は見事に命中し、大量の煙幕が溢れ出す。ドネスたちをすぐに、見えなくなるほど覆い尽くす。
「ごほっごほっ」
咳き込むライラ。手を振り、煙を撒く。
「ちっ。めんどくせぇ。あぶり出す気か」
ドネスが、口を押さえながら、盾ごと移動する。
「よし、出てきたな。カイ、クロード、頼む」
シオンがそう言うと、待ってました、と丘を下るカイ。クロードも頷き、付いていく。
煙に隠れ、二人の姿はドネスたちには見えていない。盾を持ちつつ、前へと歩くドネス。ライラとドバゴもその後ろに付いていく。
やがて、煙が消え始める。
「よぉ、お前ら。久しぶりだな」
カイが小銃を持って、左から現れる。
「っ!」
慌てて、盾を向けるドネス。だが、後ろから、発砲音がし、また、ドバゴが倒れる。すぐさま、ライラも声を上げ、倒れた。
「何っ!?」
後ろを振り返るドネス。そこには、涼しい顔をして、銃を構えるクロードがいた。
カードを取り出そうとした瞬間、後ろから、カイに銃を突き付けられる。
「やめとけ。そこまでだ」
カイの銃口は、しっかりと、スーツ越しに背中を捉えている。
「……ここまでかよ、めんどくせぇ」
カイの銃口から、三度の発砲音。続いて、クロードも、三発撃つ。
『ドネス・バトロウス。ライラ・ベルク。ドバゴ・ブランケ。以上、3名、失格だ』
各自の無線機から音が聞こえ、三人が、光に包まれ、姿を消す。エリア6へ、転送されたのだ。
「残り4名だな」
アベルが、丘の下にいるクロードとカイを見て言う。
「ああ。ヤミもそろそろ、我慢の限界さ」
「……なるほど。お前の狙いは、そういうことか」
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