第十一章 サイカイ

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「濱野さんが、思い出してくれて良かったよ。実は、頼みたい事があるんだ」  暫くたってから、三笠君が私の耳元で囁く。 「なに? 私、三笠君の頼みだったら、何でもします」  涙を拭きながら答える。 「ありがとう。じゃあ、僕と一緒にネコモリサマの所に行って欲しい」 「それは構わないけど…。なんで、もう一度ネコモリサマの所に…?」  うーん、それは…。と、三笠君が恥ずかしそうに頭を掻きはじめる。 「僕も時間が戻った直後は、記憶が戻って無かったんだよ。それで、ちょっとヘマをして しまったんだ」  ヘマ? なんの事を言ってるんだ? 「記憶が戻ってたら、ネコモリサマに対して、もう少し上手く立ち回れたんだけども…。 本当、失敗した」 「えーっ? 何の事を言ってるの? さっぱり分からないよ」 「ネコモリサマを助けたのは、僕って事になってるだろ。で、ネコモリサマが今朝早くに 僕の所にやって来たんだ」 「…それで?」 「ネコモリサマから恩返しの話をされたんだけど…。その時に、恩返しを辞退するとか、 違う願いを言えば良かったんだけど…」 「えっ? いったい、何をお願いしたの」  そこで、三笠君は大きな溜息を吐き出し、私に衝撃の事実を告げる。 「僕に妹が居る事は言ったろ。昨日、その妹とつまらない事で喧嘩したんだ…。そして、 今朝、目が覚めたら…」 「目が覚めたら?」 「妹が…、猫になってた」 ―おしまい―
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