第十章 願い

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「ところで、お主。この中に入って、いったい何をしようとしておるんじゃ」  そういえば、私もこれから何をするのかを聞いていない。 「あのぉ、三笠君。私、この中に入ったら、何をすればいいの?」  恐る恐る聞いてみる。 「それは…」と言いかけて、三笠君が口ごもる。  ちょっと間が開いて、 「濱野さんは、何もしないでいて欲しい」 「何もしない? それって、どういう意味ですか」 「うーん。僕の考えが正しければ、濱野さんは何もしない方が良いし、何も知らない方が 良い。そうでないと、僕の考えた方法は成立しないんだ」  何もしないのが正しい方法って事なの? 一体どういう事? 「不思議に思うかも知れないけど、僕を信じて言う通りにしてほしい」 「分かった。私、三笠君を信じる」 「ありがとう。さあ、そろそろ時間だ、飛び込む用意をして」  そう言いながら、三笠君が私の手を握る。 「あっ! 翠は? 翠も連れて行かないと」 「翠ちゃんは、あの場に居なかったから、連れていけない。大丈夫だよ。これが首尾良く いったら、翠ちゃんは君の家で人間に戻ってる」 「本とに?」 「ああ、間違いない。さあ、もう時間だ、僕の合図で飛ぶよ」  三笠君が水鏡の中に目をこらし、間合いを量る。 「イチ、二の、サン。今だ」  三笠の合図とともに、私達は手をつないだまま水の流れの中にダイブした。
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