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「ところで、お主。この中に入って、いったい何をしようとしておるんじゃ」
そういえば、私もこれから何をするのかを聞いていない。
「あのぉ、三笠君。私、この中に入ったら、何をすればいいの?」
恐る恐る聞いてみる。
「それは…」と言いかけて、三笠君が口ごもる。
ちょっと間が開いて、
「濱野さんは、何もしないでいて欲しい」
「何もしない? それって、どういう意味ですか」
「うーん。僕の考えが正しければ、濱野さんは何もしない方が良いし、何も知らない方が
良い。そうでないと、僕の考えた方法は成立しないんだ」
何もしないのが正しい方法って事なの? 一体どういう事?
「不思議に思うかも知れないけど、僕を信じて言う通りにしてほしい」
「分かった。私、三笠君を信じる」
「ありがとう。さあ、そろそろ時間だ、飛び込む用意をして」
そう言いながら、三笠君が私の手を握る。
「あっ! 翠は? 翠も連れて行かないと」
「翠ちゃんは、あの場に居なかったから、連れていけない。大丈夫だよ。これが首尾良く
いったら、翠ちゃんは君の家で人間に戻ってる」
「本とに?」
「ああ、間違いない。さあ、もう時間だ、僕の合図で飛ぶよ」
三笠君が水鏡の中に目をこらし、間合いを量る。
「イチ、二の、サン。今だ」
三笠の合図とともに、私達は手をつないだまま水の流れの中にダイブした。
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