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パッパッー。けたたましい警笛。キキーッというタイヤの悲鳴。ガッシャーンと何かが
倒れる音。
三つの事が同時に起こった。
音の方向を見ると、自転車に乗ったまま、横断歩道に横たわっている三笠君が居た。
「馬鹿野郎。どこ見て歩ってるんだ」
三笠君の数十センチ手前で止まった自動車から、罵声が聞こえる。
横断歩道の先の信号を見ると赤だ。三笠君、信号無視をしたらしい。
「す、すみません」
三笠君が、体を摩りながら立ち上がり、自動車の方に頭を下げる。
ああ、良かった。怪我はしていないようだ。
三笠君を撥ねそこなった自動車が、轟音を立てて走り去っていく。
「三笠君、大丈夫?」
歩道に戻った三笠君に声をかける。
「うん。どうやらね…。それに、ネコモリサマも無事なようだ」
「?」
三笠君の視線の先を追うと、私の隣で猫が腰を抜かしていた。
太い体の白黒のブチ猫。黒い顔で、鼻の下の部分だけ白くて口髭みたいだ。
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