第十章 願い

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「あなたも、災難だったね」  私が猫を抱き上げようとすると、髭の猫は腰を抜かしたまま、前足を伸ばして暴れている。  よく見ると、地面にドラ焼きが落ちていた。 「これ、あなたのなの?」  ドラ焼きを拾い上げ、猫の目の前にかざすと、 ―それは、儂のじゃ―  と言わんばかりにドラ焼きをひったくって、前足で抱え込んだ。 「食い意地が張ってるのね、ネコモリサマ」  ネコモリサマ?  あれ? 私、この猫の名前を知ってる。なんでかしら?  そう思う間もなく、髭の猫はドラ焼きを口に咥えて、どこかに走り去った。  何なのよ、もう。イーっだ。  ネコモリサマに向かって、鼻のシワを造ってみせる。 「どうやら、これで上手くいったね」三笠君が声をかけてくる。 「上手く…? いった…? あの…いったい何の話ですか?」 「覚えてない? 猫になった翠ちゃんを人間に戻す話さ」  猫になった翠?  翠………、猫………、ネコモリサマ………。  …………………。  そうだ、思い出した。猫になった翠を人間に戻すために、過去にやってきたんだっけ。
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