第十章 願い

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 はっ!  あることに気がついて、急いで三笠君から体を離す。 「ごめんなさい…。あんまり、嬉しくって…。三笠君。彼女さんが居るのに、こんなこと して迷惑だったですよね」  と慌てて言い繕う。 「迷惑なんかじゃないさ。それに、僕に彼女なんかいないよ」 「えっ? でも、アーちゃんは、三笠君が女の子と手を繋いでいるのを見たって…」 「それ、妹だよ。一昨日は買い物につきあわされてたんだ」 「えっ! そうなの?!」 「丁度、そこに牟田口さんが来たんだ。あの人、噂好きだろ。それで、身を隠す素振りを したら、それに気づいた妹が急に僕の手をとって、無理やり恋人繋ぎを始めたんだ。僕の 妹は、すっごく悪戯好きなんだよ」 「…そうなんですか…」 「それを、牟田口さんに見咎められた。そして、昨日の朝、君が牟田口さん達に絡まれて から様子が変わった。きっと妙な噂を吹き込まれたに違いないと思って、弁明する機会を 伺ってたんだ」  そうか、三笠君が私の後をついて来たのは、そういう理由だったんだ。  あれっ、でも待って。それって、三笠君が私の事を気にしてくれてるって事?
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